Nov 26, 2014

功利主義入門

「功利主義入門」という薄い新書を図書館で借りて読んでみました。

「功利主義」とは何か知らなかったので勉強になりました。

「功利主義」とは、倫理(=道徳)の立場の一種類であり、「最大多数の最大幸福」を「功利性の原理」として、すべての道徳律・法律をこの原理から導き出す立場とのこと。創始者は、ジェレミー・ベンサム(Jeremy Bemtham, ベンタムでもベンサムでも可、1748-1832、英国)で、「道徳および立法の諸原理序説」が有名とのこと。

辞書の「功利」の意味は、「行為の結果として得られる名誉、利益、幸福」です。私は「功利主義とは自分の個人的な利益を最大化する立場かなと勘違いしていたのです」が、正しい意味は「功利主義とは社会全体の最大多数の最大幸福を追求すること」でした。

ベンタムが批判した原理に「禁欲主義の原理(苦痛・我慢は善、快楽・幸福は悪)」、「共感・反感の原理(自分が気に入ったことはOK、気に入らないことは禁止という立場、自然の法とか良心とか個人個人で異なる捉え方をされる曖昧なもの=要するに自分利益があるかたけだけで判断する立場、利己主義でもある)」があります。

結果主義(結果がよければ行為・手段は問わない立場)と帰結主義(原理原則にしたがった行為の結果を予測し、その行為を行うこと)の違いを述べて、功利主義は帰結主義であることを説明しています。

功利主義の「最大多数の最大幸福」の原理だけで個人がすべての日常の道徳的判断を決めようとすると、ジレンマが起きてしまうことが時々あります。この本では、いくつかの有名なジレンマを提示していますが、ジレンマに対する正解というものは示されていません。ジレンマに対する回答はないのかもしれませんがはっきりしませんでした。

しかし、この本で上げたジレンマのバカバカしさにはうんざりしました。

また、社会全体や国家のレベルで「最大多数の最大幸福」の原理を考えるとそれを素早く正確に求める計算ができるのかという問題があるのですが、その点は曖昧に手短に述べられています。民主主義と功利主義の関係は別書にて学べということなのでしょう。

それでも功利主義が次第に修正され洗練されていったことが説明されます。

ちにみに、倫理とは、道徳のこであると、この本は断言していて小気味よいです。
倫理学とは、道徳を研究する学問で、道徳といえば、宗教の戒律や憲法、法律も含めて研究することになります。

倫理を学ぶ二つの目的が書かれていました。


  • 道徳律や法律を学びそれを実行できるようになること
  • 道徳律や法律が正しいのか冷静に検討できるようになること


また、安心して倫理や法律を検討できるように三点を明示しています。


  • 武道の修練と倫理の研究の比較から研究の場の設定が必要であること
  • 功利主義から研究を始める利点
  • 他人の倫理観を批判すべきでないことは、倫理研究の場ではありえないこと


この三点は明快であり安心できるます。それでも、イスラム教のコーランについての批判は自己保身のために避けたほうが賢明であると思います。

残念ながら、この本では、功利主義の道徳律が具体的に何であるかを一つも提示されることはありませんでした。また、著者がどのような主義・立場なのかもさっぱり伝わりませんでした。本の薄さから仕方が無いのかもしれませんし、わざとそう書かれたのかもしれません。

私の立場は、幸せ研究室に示してあります。この立場を、功利主義の初歩を学んだことで点検し洗練していかなければと思いました。

- メモ -

推奨図書 「自然論」「自由論」「功利主義論」J・S・ミル(1806-1873) ベンサムの弟子、功利主義であり自由主義である

ウィリアム・ゴドウィン(1756-1836)、無政府主義者の功利主義者、法律では人間一般への公平を追求しすぎて家族・友人という属性を無視する考え方で結婚制度にも批判的だった、「政治的正義」を著すが、ウォルストンクラフトとの結婚、死別、娘の恋愛を経験し、著書の内容は第三版で、家族への愛情を重視するように変わる。

メアリ・ウォルストンクラフト(1759-1797) 初期のフェミニズム思想家「女性の権利の擁護」を著す、後にゴドウィンと結婚し娘を出産後半年で死去。ゴドウィンの思想に大きな変化をもたらした。

カント、ドイツの哲学者、きわめて厳格

ジョン・オースティン(1790-1859) ベンサムの弟子


  • 直接功利主義(瑣末な行為にも最大多数の最大幸福の原理から判断していく立場)
  • 間接功利主義(大勢に影響のない瑣末な行為には原理判断を適用しない立場)
  • 規則功利主義(予め規則を用意しておき瑣末な行為に原理判断をしなくて済むようにする立場)
  • 行為功利主義(予め規則を用意しない立場、直接功利主義と同じである)
公平性の問題=道徳的に重要な違い、公平の範囲をどこまで広げるかの問題、家族、友人、会社、組織、国家、地球レベル、人間、動物、植物、無生物、環境。

ジョン・ロールズ(1921-2002)「正義論」での政治的の少数派をどのように扱うかの問題、解決策例としては長期的時間の経過と長期の信頼を思考に入れて少数派に選択と補償を与える方法が必要となる。

ジョン・ロック(1632-1704) 自由主義の祖

自由主義と功利主義は相性がいいが、自由権の起源について相違がある。ジョン・ロックは自然権として自由権と所有権を定義、ミルは功利原理に叶うから自由権と所有権を認めている。

エドウィン・チャドウィック(1800-1890)、ベンサムの弟子、権威主義的公衆衛生の思想家、「大英帝国における労働人口集団の衛生状態」を著す。権威主義、パターナリズム(=父権主義)

幸福の定義の曖昧さと個人差、快楽と苦痛の定義の曖昧さと個人差、結論は、何が幸福かは個人の自由だとするしかないだろうということ。

欲求の満足とはどういうこと、知ってしまったことで知る欲求、利益が増えることが幸福なのか

感情と理性、脳と心の構造、幸福の感じる場所は心のどこか、感情=直感=本能の選択の合理性

巻末に参考図書一覧がありました。

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